大きなイベントを終えて前向きに変化するのはいかにも物語的な展開だが、キキさまは揺り戻しでいつも以上にじめじめしていてよかった。日常系である。キキさまに限らず、企画や、記念や、振り返りではない、いわゆる無軌道の雑談はやはり好きだと思う。
ぼっちざろっくにも劣等感を抱いて、どのグループやコミュニティにも属せない自分を「保健室のピエロ」と称し始めるところかなり笑った。
「人といっぱい喋ったあとってさあ、ひとりになってバランス取りたくなるのはなんでなんだろうね?」という言葉。他人と会ったあとの帰り道に、自分にとって大事な音楽や配信を聞いて、なにかの均衡を保とうとしてしまう私は大きく頷いたし、「均衡を保つ」という自分の抱えていたイメージと、キキさまの「バランスを取る」という感覚の身体性が似ているのもうれしかった。
まるで外に出て他人と会話をしているあいだ、平均台の上にでも立っているかのような言い方だが、だとしたら、そこから足を踏み外した先には、自分で自分を認められなくなる不安が待っている。少なくとも私は、だから弁明のように文章を書いたりするのだろうし、家からたくさんの人に声を届けているキキさまに、共感しつつ、わずかなうらやましさも覚えるのだと思う。
「曖昧な知識しかないのにさ、新たな知識を浅く浅く取り入れようとしてさあ、どんどんいろんなものの記憶がなくなっていくんだよね」。